
大村 英昭
1942年生まれ、2015年没。大阪大学教授や関西学院大学教授などを歴任した。専攻は臨床社会学、宗教社会学。著書に『臨床仏教学のすすめ』(世界思想社)、『日本人の心の習慣』(日本放送出版協会)など多数。
阪本 俊生
1958年生まれ。南山大学経済学部教授。専攻は理論社会学。著書に『ポスト・プライバシー』(青弓社)、『プライバシーのドラマトゥルギー』(世界思想社)など。
年間3万人超え、10年以上続いた日本の自殺増加は何だったのか。
なぜ、1998年からの日本の自殺増加の中心は中高年男性だったのか。
なぜ、2000年以降、中高年の自殺が減っても、若者の自殺は減らないのか。
なぜ、日本の女性や若者の自殺率は、他の先進国と比べてとくに高いのか。
社会の自殺率は、何によって変化するのか。
自殺研究は、いまも貧困や失業、離婚、病気、争いごとなどに自殺リスクの原因を求めがちだが、自殺は高度に社会的な現象でもある。自己本位や愛他、規範崩壊、宿命などの個人的な事情に押し込めずに、隠されている背景や事情を究明する必要がある。
そのために、自殺率統計も援用しながら、ゴフマンが提起する自己イメージ(体面=フェイス)の概念をデュルケムと関連づけて考察し、デュルケムの『自殺論』を現代に適用して分析する。
孤立や社会的排除など、個々人が集団や組織から切り離されたいま、個々人がどんな社会関係にも参入できる自己イメージをもつことが必要だ、と提起する新しい「自殺の社会学」。