
元森 絵里子
1977年、東京都生まれ。明治学院大学社会学部教授。専攻は歴史社会学、子ども社会学。著書に『「子ども」語りの社会学』『語られない「子ども」の近代』(ともに勁草書房)、共編著に『子どもへの視角』、訳書にアラン・プラウト『これからの子ども社会学』(ともに新曜社)など。
高橋 靖幸
1978年、東京都生まれ。新潟県立大学人間生活学部講師。専攻は教育社会学、子ども社会学。共編著に『子どもへの視角』(新曜社)、共著に『教師のメソドロジー』(北樹出版)、論文に「昭和戦前期の児童虐待問題と「子ども期の享受」」(「教育社会学研究」第102集)など。
土屋 敦
1977年、神奈川県生まれ。関西大学社会学部教授。専攻は歴史社会学、福祉社会学、子ども社会学。著書に『はじき出された子どもたち』、共編著に『孤児と救済のエポック』(ともに勁草書房)、論文に「「保護されるべき子ども」と親権制限問題の一系譜」(「子ども社会研究」第23号)など。
貞包 英之
1973年、山口県生まれ。立教大学社会学部教授。専攻は社会学、消費社会論、歴史社会学。著書に『地方都市を考える』(花伝社)、『消費は誘惑する 遊廓・白米・変化朝顔』(青土社)、共著に『自殺の歴史社会学』(青弓社)、『未明からの思考』(ハーベスト社)など。
現在、多様性の尊重が価値あるものと称揚されている一方で、格差や差別などの文脈でも多様な子どものあり方に注目が集まっている。保護と教育の網の目が子どもを絡め取っていることへの批判が繰り返されているが、同時に子ども時代の生存と教育の保障が重要視されてもいる。
かつてフィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生』が、子どもを保護し教育すべきと見なす感覚が歴史的なものだと明らかにし、社会的なインパクトを与えた。だが、近代になって「誕生」した子ども観が現代では隅々まで行き渡り、子どもを苦しめているという単線的な歴史像では、多様な子どもをめぐる排除と包摂が交錯する現代を考える力とはなりえない。
工場や曲芸で稼ぐ年少者、虐待された貰い子、孤児・棄児・浮浪児、金銭を積極的に消費する年少者――日本の戦前期の多様な年少者の生とそれを取り巻く社会的な言説や制度を丁寧に掘り起こし、素朴な誕生論とは異なった多様なまなざしと実践の交錯を明らかにすることで、子どもと子ども観の近代を描き直す。