大槻 奈巳(オオツキ ナミ)
聖心女子大学現代教養学部教授。専攻は社会学、労働とジェンダー。著書に『職務格差』(勁草書房)、共編著に『大学生のためのキャリアデザイン入門』(有斐閣)、共著に『なぜ女性管理職は少ないのか』(青弓社)、『同一価値労働同一賃金の実現』(勁草書房)、『ジェンダーで学ぶ社会学 全訂新版』(世界思想社)など。
労働人口の減少などを背景に、職務を軸にした雇用が広まりつつある現在、派遣労働者はジョブ型雇用の代表格である。「自由な働き方」というイメージもある彼/彼女たちは、どのような思いで働き、自身のキャリアと向き合い、ライフコースを歩んでいるのか。派遣労働を取り巻く困難や課題はどこにあるのか。
大きな転換点になった2015年の労働者派遣法の改正で掲げられた派遣期間の制限見直しやキャリアアップ措置、待遇の改善などの実態を、派遣労働者40人や派遣元事業主などへのインタビュー、1,650人へのウェブ調査を組み合わせて明らかにする。
そして、雇用の安定やキャリアの向上が必ずしも実現しておらず、給与や雇用形態で不安を抱えながら働くことを余儀なくされている現状をあぶり出す。同時に、男女間の格差やハラスメントの実態、コロナ禍での「被害」も浮き彫りにする。
5年に及ぶ調査から派遣労働の実情を照らし出し、それを通して正社員の労働実態や多様な働き方の可能性も検証する。