
鄭康烈(チョンカンリョル)
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。日本学術振興会特別研究員PD。専攻は国際社会学、移民研究。共著に『越境する平和学――アジアにおける共生と和解』(法律文化社)、共訳書に『図表でみる移民統合――OECD/EUインディケータ(2018年版)』(明石書店)、論文に「在日コリアンの就学遍歴とヘイトスピーチへの態度形成――朝鮮学校における差別対抗的なアイデンティティ」(「アジア太平洋研究」第47号)など。
自己責任や競争を推し進める新自由主義の時代にあって、在日コリアンはどのように自身の人生を選択し、この社会に「適応」しようとしているのか。また、在日コリアン内部での格差は、どのように生起しているのだろうか。
在日コリアン社会へのフィールドワークを通じて得たライフコースに関する語りの分析から、現代の在日コリアンがエリート層、あるいはアンダークラスへと分極化していくプロセスを丹念に描き出す。それと同時に、拡大した格差が在日コリアンのコミュニティ内部に葛藤を生じさせる事態にも迫る。
新自由主義の原理で満たされた現代を生きる在日コリアンの経験を、人種やエスニシティ、ジェンダー、階級などの複数の要因の絡み合いを想定する「交差性」の視角から読み解き、移民としての背景をもつエスニック集団が直面する複雑化し細分化した社会的不平等の実相を浮き彫りにする。