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傷痍軍人と文学の日本近代

3,960円

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市川 遥(イチカワ ハルカ) 1992年、三重県生まれ。名古屋大学大学院人文学研究科博士研究員、中部大学・南山大学・愛知淑徳大学・名古屋学院大学非常勤講師。専攻は日本近代文学。共著に『戦後日本の傷跡』(臨川書店)、論文に「大衆作家たちの「潤色執筆」――『傷痍軍人成功美談集』の成立と「再起奉公」言説をめぐって」(「昭和文学研究」第83集)など。 戦争によって傷ついた兵士や軍人である傷痍軍人を、文学はどのように描いてきたのか。作品は傷痍軍人をいかに語り、読者にどのように読まれてきたのか。 日清・日露戦争を起点に、アジア太平洋戦争、そして戦後までを対象にして、傷痍軍人を描く文学の歴史的な見取り図を提示する。具体的には、山田美妙や江戸川乱歩、井伏鱒二、直井潔たちの文学作品のほか、美談集や童話、文芸作品集などを取り上げ、新聞や雑誌などのマスメディアでの議論も肉付けして、傷痍軍人表象の変遷を跡づける。 当初は戦争での傷病による苦しみを抱えた人々として、アジア太平洋戦争期には「傷」を抱えるヒーローとして、戦後には様々な戦争の記憶と交差しながら反戦を体現する存在として、様々に描かれた傷痍軍人の表象から、彼らを取り巻く時代の諸相や力学を浮き彫りにして、戦争と文学の緊張関係に迫る。

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