
桑原 ヒサ子(クワハラ ヒサコ)
1953年、東京都生まれ。敬和学園大学名誉教授。専攻はドイツ文学、ドイツ現代文化。著書に『ナチス機関誌「女性展望」を読む――女性表象、日常生活、戦時動員』(青弓社)、共著に『時代を映す鏡としての雑誌――18世紀から20世紀の女性・家庭雑誌に表われた時代の精神を辿る』(日本独文学会)、『軍事主義とジェンダー――第二次世界大戦期と現在』(インパクト出版会)、論文に「女性雑誌『コンスタンツェ』Constanzeが伝える敗戦後のドイツ人女性――結婚、シングルマザー、就労、法律」(「人文社会科学研究所年報」第16号)、「ドイツ人女性の戦後――「零時」からの出発」(「人文社会科学研究所年報」第13号)など。
ナチス・ドイツは、宗教的祝祭のクリスマスさえも国家的なプロパガンダとして利用していた――。
ナチス時代に家庭ではクリスマスをどう祝っていたのか。そして、民族共同体の強化の一環としてクリスマスはどう使われ、第2次世界大戦以降はそれが戦時プロパガンダへとどのように接続していったのか。
ナチス・ドイツは、ヨーゼフ・ゲッベルス指導のもと、ラジオ、映画、新聞・雑誌、書籍などのあらゆる大衆メディアを使ってイデオロギー宣伝を軸にしたプロパガンダを展開した。その一環として刊行された官製女性雑誌「女性展望」の記事と写真から、プロパガンダとしてのクリスマスの実情を描き出す。
クリスマスというレンズを通して映し出される、ナチス・ドイツが理想として宣伝した女性の社会活動、家庭や家族のあり方、銃後の生活を緻密に分析する。そして、プロパガンダに巻き込まれ、戦時下の激流に生きる当時の女性たちの姿を丁寧にすくい取る。