
川北 稔(カワキタ ミノル)
1974年、神奈川県生まれ。愛知教育大学教育学部准教授。著書に『8050問題の深層――「限界家族」をどう救うか』(NHK出版)、共編著に『「ひきこもり」への社会学的アプローチ――メディア・当事者・支援活動』(ミネルヴァ書房)、共著に『セルフ・ネグレクトのアセスメントとケア――ツールを活用したゴミ屋敷・支援拒否・8050問題への対応』(中央法規出版)、『大人になる・社会をつくる――若者の貧困と学校・労働・家族』(明石書店)、論文に「長期化するひきこもり事例の親のメンタルヘルスと支援」(「精神科治療学」第35巻第4号)、「ひきこもり経験者による空間の獲得――支援活動における空間の複数性・対比性の活用」(「社会学評論」第65巻第3号)、「ストーリーとしての引きこもり経験」(「愛知教育大学教育実践総合センター紀要」第8号)など。
ひきこもりの長期化や高年齢化が指摘され、親が高齢になり介護が必要になった段階で親と同居している無職や未婚の成人子の存在、特に子のひきこもりの問題が浮上した。8050問題である。
社会問題化してすでに20年以上たったひきこもりとは何か。それは大きくは社会的孤立に含まれる状態であり、年齢に固有の孤立(就職先とのミスマッチを経験する時期の若者や、退職後の高齢者など)、病気や障害による孤立、心理的な背景をもつ孤立(不安感や疎外感など)などがいくつも重なって表れることだ。
本書では、ひきこもり研究の第一人者が、「ひきこもりとは多様な社会的孤立の一側面である」として、生涯にわたる社会的孤立の解消をめざす施策を提起する。
民生委員の役割、生活困窮者窓口の支援、地域包括支援センターの対応、支援論の変遷、さらには政府の政策や法律を検証することを通して、孤立の多元的な理解と支援を提言する。表80点以上、図30点と、この20年の推移がわかるビジュアルな資料も充実。