河合 優子(カワイ ユウコ)
立教大学異文化コミュニケーション学部教授。専攻は異文化コミュニケーション研究。著書にA Transnational Critique of Japaneseness: Cultural Nationalism, Racism, and Multiculturalism in Japan(Lexington Books)、編著に『交錯する多文化社会――異文化コミュニケーションを捉え直す』(ナカニシヤ出版)、共著に『多様性との対話――ダイバーシティ推進が見えなくするもの』(青弓社)、『グローバル社会における異文化コミュニケーション――身近な「異」から考える』(三修社)など。
アメリカでの黒人への暴力事件と抗議運動、ヨーロッパでの移民排斥、コロナ禍におけるアジア人への差別などがクローズアップされ、海外の問題と思われがちな人種主義や人種差別だが、日本でも歴史的に、そして現在でも深刻な問題であり続けている。
欧米の人種概念と人種主義の歴史的・社会的な背景、基本的な知識を押さえたうえで、日本の人種概念を捉え直し、近代から現代まで、日本で人種主義が展開してきた足跡をたどりながら、トランスナショナルな視点から日本の人種主義の特徴を整理する。そして、アジア地域の植民地支配をはじめとする日本の歴史的背景や「日本人とは誰か」という問いと結び付きながら、日本社会に意識的・無意識的に根づいている人種主義の現状を具体的な事例をもとに明らかにする。差別、偏見とステレオタイプ、アイデンティティなどの視点から、個人の日常的な意識や振る舞いに人種主義が否応なく結び付いていることも浮き彫りにする。
国際的・領域横断的に蓄積されてきた人種主義に関する議論をまとめ、「私たちの問題」として日本の人種主義を考える視点を提供する入門書。