大島 岳(オオシマ ガク)
明治大学情報コミュニケーション学部専任助教。専攻は社会学、生活史・オーラルヒストリー研究、ジェンダー・セクシュアリティ研究。論文に“Societal Envisioning of Biographical AIDS Activism among Gay People Living with HIV in Japan”(Historical Social Research, 48(4))、「HIV陽性者の生存への希望はいかに育まれてきたのか――1990年代SHIP Newsletterのヘルスリテラシー向上のための取りくみとGIPA」(「保健医療社会学論集」第31巻第1号)、「ゲイ雑誌『G-men』にみるグラスルーツ・アクティヴィズム」(「年報社会学論集」第32号)、「「性的冒険主義」を生きる――若年ゲイ男性のライフストーリーにみる男らしさ規範と性」(「新社会学研究」第1号)など。
現在、地球規模で最も深刻な感染症の一つHIV/エイズ。医療の進展とともに服薬を続ければ死に至らず、ほかの人と同じ生活ができるようになった。だがジェンダーやセクシュアリティ、病いや障がいなど交差的な差別や偏見はいまだに根強い。日本で「HIVとともに生きる」ことはいったいどのようなことなのだろうか。
ゲイ男性を中心にHIV陽性者百余人と交流し、22人のライフヒストリーを聴き、かれらが書いた手記などの史資料も読み込み、生活史に深く迫る。当事者と支援者がおこなってきた協働的な実践を掘り起こし、周囲に創造的に関わりながら包摂する力を発見していく。
傷つきとレジリエンス、病いの語り、クィア理論や批判理論など社会学理論から、一人ひとりが苦しみのなかで培ってきた生きる力が、社会とどのように接合し社会を構想できるかを浮き彫りにする。傷ついた生の意味を協働で探り、親密性や共同性を育む「生きるための理論」を探求するラディカルな生活史研究。