
三浦 裕子(ミウラ ユウコ)
1953年、福岡県生まれ。1993年からお菓子教室Sweets & Table主宰。お菓子作りを教えるかたわら2011年に九州大学大学院比較社会文化学府修士課程に入学、13年に同学府博士課程後期に進学し、19年に同学府博士課程後期単位取得退学。博士(比較社会文化)。研究分野はお菓子の歴史、日本の洋菓子史。製菓の研修でウィーンを訪れた際、国立歌劇場の立ち見席で連日オペラとバレエを観て以来、舞台芸術に魅了されている。また表千家の茶の湯に長く親しむ。「劇場は癒しの場」で2001年に第11回日本ダンス評論賞入賞。著書に『うれしいお菓子、せつないお菓子――スウィーツ・セラピー』(東京書籍)、『スイート・スイート・クラシック――洋菓子でめぐる音楽史』(アルテスパブリッシング)など。
いま日本では、菓子店やコンビニなどで、様々な種類のバウムクーヘンを気軽に食することができる。中央に穴が空き、「年輪」に見立てられるユニークな形状のこの菓子は、いつ歴史に登場して、どのように発展してきたのだろうか。
ドイツでの文献をもとにパンや料理、菓子の間で行きつ戻りつしながら形作られてきたバウムクーヘンの来歴を明らかにし、19世紀から20世紀の初頭にドイツで菓子の王と称されるようになるプロセスについて考察する。さらに各時代のレシピや焼成法を史料から読み解きながら、当時の素材や形状、色、味についても丁寧に紹介する。加えて、第一次世界大戦を期にもちこまれてから現在まで、独自の発展を遂げた日本のバウムクーヘンにも光を当てる。
「パン職人と焼き菓子」「宴会料理との関係」「年輪の誕生」など、バウムクーヘンをめぐるエピソードをふんだんに織り込みながら、多くの人々に愛されるバウムクーヘンの歩みをたどる異色の文化史。歴史的に貴重なレシピの和訳や図版も多数所収。